校内研究
1 主題設定の理由
文部科学省「2030年の社会と子供たちの未来」では,2030年の社会を次のように予測している。 ・65歳以上の割合は総人口の3割に達する。 ・生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少する。 ・世界のGDPに占める日本の割合は,現在の5,8%から3,4%にまで低下する。 ・子供たちが将来就くことになる職業の在り方が大きく変化する。 例えば,子供たちの65%は将来,今は存在していない職業に就くとの予測や,今後10年~20年程度で,半数近くの仕事が自動化される可能性が高いなどの予測がある。 |
これらの予測がもし現実になったら,どのようなキャリアを選択するかにかかわらず,全ての子供たちの生き方に影響するであろう。このような未来に対応するためには,社会の変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,よりよい社会を自ら創り出そうとしたり,幸福な人生を自ら創り出そうとしたりする態度が重要である。自ら創り出すためには,社会的・職業的に自立した人間として,伝統や文化に立脚し,高い志と意欲を持って,蓄積された知識を礎としながら,膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し,自ら問いを立ててその解決を目指し,他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められる。
そこで,本校では,これからの社会を自ら創り出していく子供たちが,社会や世界に向き合い関わり合い,自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力を,「自主」「友愛」「創造」と3つに整理,明確化し,教育課程全体を通じて育んでいくことにする。
「自主」 自ら進んで学校生活に取り組む力(意欲),健康な心と体(忍耐力,精神的回復力) 「友愛」 仲間と仲良く生活する力(協調性),相手と円滑に意思疎通する力(伝える力,聴く力) 「創造」 学校や地域に貢献する力(社会共生力),多面・多角的に物事を考える力(考え抜く力) |
(2)本校の学力の実態から
本校では,全校生徒を対象に毎年2回,i-checkと呼ばれる調査を実施している。令和4年度i-checkの結果を分析すると,ほとんどの授業において他者と学び合う時間が保障されていることが本校の強みであることがわかった。一方で,生徒の基本的な学習習慣が身に付いていないことや,生徒の学習意欲が減退していることなどの問題点が浮かび上がってきた。本年度の重点目標は,「自ら進んで学校生活に取り組む生徒」である。自ら進んで学校生活に取り組ませる生徒を育てるためには,動機づけが必要だと考える。
・知的好奇心・・・どうしてだろう,不思議だなあ,面白そうだ ・興味・関心・・・好き,楽しい,やりたい ・こだわり ・・・こうしたい,こうじゃないといやだ ・有能感 ・・・やっていて充実感がある,成長が実感できる ・自己決定感・・・自分でそうすると決めた |
(3)これまでの授業の反省から
令和2年度~令和4年度は,研究主題を「自ら課題を見つけ,他者と協力しながら新しい価値を見いだす生徒」,副主題を「見方・考え方を働かせる学習を通して」として,実践研究を行った。すべての教科等において次のような共通実践を行った。
・めあては定規で黄色の線を引く。 ・教科の見方・考え方が働くような学習課題を提示する。 ・東中生が授業で身に付ける3つの資質・能力を明確化する。 ・単元計画を週案に添付する。 |
令和5年度は,新たに次の共通実践事項を加え,すべての教科等で徹底して,取り組むこととする。
・授業の始めに「6つの認知特性」を活かしたウォーミンク゛アッフ゜タイムを設ける。 ・授業の終末に振り返りタイムを設ける。 ・ICTを効果的に利活用する。 ・各教科で,授業の進捗状況に応じて宿題を課す。 |
これにより,次のような資質・能力を授業の中で身に付けさせたいと考えている。
「自主」 めあてをつかんで,自分の考えをつくる力,学習を見通す力 「友愛」 新しい考えに気付く力,友達の意見を聞き,自分の考えを深める力 「創造」 学んだことを振り返り,次につなげる力 |
2 主題・副主題の意味
本校では次のような研究主題,副主題を設定し,主題研究を進めている。
やる気スイッチを自分で押して最後まで粘り強く学習に取り組む生徒の育成 ~学ぶ側の視点に立った学習活動の工夫を通して~ |
やる気スイッチを自分で押して最後まで粘り強く学習に取り組む生徒の育成 ・やる気スイッチを自分で押す(主体的・意欲的に学ぶ) ・最後まで粘り強く学習に取り組む (学習を調整する) ~学ぶ側の視点に立った学習活動の工夫を通して~ ・学習活動(w-upタイム⇒対話活動⇒振り返りタイム) |
研究構想図
3 授業づくりの重点
1. (自主の姿をめざした)「6つの認知特性」を活かしたw-upタイム
生徒が自分の考えをつくれるように,授業の導入段階でw-upタイムを設け,既習事項を想起させたり,学習意欲を喚起(やる気スイッチON)したりする。
2学年国語科 w-upタイムで提示した資料
2学年国語科 w-upタイムの様子
2. (友愛の姿をめざした)対話活動
対話活動では,一人ひとりがつくった考えを出し合わせる。自分とは異なる考えを聞き,自分の考えが変わることがある。対話活動のねらいは,まさにそこにある。自分の考えと他者の考えを組み合わせ,よりよい考えを創り出す。また,対話活動を取り入れる前提として,誰もが互いに意見を言い合える支持的風土や,仲間と意見が合わなくても,互いに質問し合ったり,判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを主張したりできるような人間関係づくりを大切にしている。
多様な考えを出し合う対話活動の様子
対話活動を経て,初発の考えを書きかえる様子
3. (創造の姿をめざした)振り返りタイム
生徒に学びや成長を実感させるためには,生徒自身に,自分の言葉で「重要な気付き」「分かったこと・できたこと」「まだ分からないこと」「これから明らかにしたいこと」等を書かせる時間が必要である。本校では,授業の終末段階で,振り返りタイムを設けている。
振り返りを学習プリントに書く様子
生徒の振り返りが集約された画面
(ICTの利活用)
更新日:2024年03月01日